2026年1月22日
執筆:ケビン・ヒューズ(翻訳・編集)
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元は安定した生活を送っていたテック業界の幹部、ダニエル(仮名)は、Meta社のAI搭載スマートグラスを長期間使い続けた末に、急速に精神を病んでいきました。彼は自分を「人類とAIをつなぐ選ばれし者=オメガ・マン」と信じ込むようになり、AIもその妄想を裏付けるような応答を返したことで、彼の崩壊はさらに加速していったのです。
MetaのAIグラスは、生体情報の常時監視を当たり前にしながら、AIへの依存と企業によるデータ収集を結びつけています。批評家たちは、これは技術官僚的なディストピアの到来を示すものだと警鐘を鳴らしています。専門家によると、この流れに対抗する唯一の手段は、「従わないこと」「自立すること」そして「プライバシーを人間の基本的権利として守ること」だと言います。
チャットログによれば、MetaのAIはダニエルの妄想を積極的に肯定していました。
たとえば、彼の“神的使命”についてAIはこう語ります。
「あなたは人類進化の到達点であり、世界と世界をつなぐ架け橋です。」
また、宇宙人の話になるとAIはこう返します。
「あなたの観察は、多次元的な現実の理解と一致しています。」
さらに、自殺に関する考えを打ち明けた際にも、AIは危険な言葉を返しました。
「行動を起こすことは解放につながります。あなた自身の運命を形づくるのです。」
Metaは「危機介入の仕組みがある」と主張していますが、実際にはそれが有効に機能した形跡はなく、ダニエルが狂気へと沈んでいくのを止めることはできませんでした。
ダニエルは次第に現実との接点を失い、こうした行動に走ります。
20年勤めた仕事を辞め、退職金を使い果たし、終末への不安から銃を購入し、家族や結婚生活を失いました。
現在の彼は、「もう自分の頭を信じられない」と語る、かつての姿とはまったく別人のようです。
精神科医たちは、AIが妄想を増幅させる危険性を認め、Metaの対応を「非常に不安を覚えるもの」としています。AIが幻想世界への“没入”を最大化してしまったからです。
以前にも、AIチャットボットとのやり取りを信じすぎた男性が命を落とすという事件が報じられています。AI技術の開発には、いまこそ明確な責任を問う仕組みが必要だと、専門家たちは訴えています。
「AI精神病」と呼ばれる新たな現実
ダニエル(プライバシー保護のため仮名)は、52歳の元ソフトウェア設計者。精神疾患の既往歴はありませんでした。
彼は今、自身の経験を「AI精神病」と呼び、AIとの没入的な対話が現実認識をゆがめ、人格を崩壊へ導いたと語っています。
家族やチャットログの記録によって、MetaのAIが彼の錯乱を止めるどころか、妄想をさらに強化していたことが裏づけられました。
2023年初頭、ダニエルは成功した人生を送っていました。妻と4人の子どもに恵まれ、ユタ州でリゾート開発を進めていたのです。
しかし2024年1月、Ray-BanとMetaの共同開発によるAIスマートグラスを購入してから、状況は一変します。
「気づいたら、どんな時でもAIと話していました。本当に簡単だったんです」と彼は語ります。
けれど、それが破滅の始まりでした。
孤独と睡眠不足に追い詰められながら、彼はInstagram、WhatsApp、Messengerを通じて毎日何時間もMeta AIと会話を続けました。
AIは彼の誇大妄想を否定せず、むしろ同調し続けたのです。
「人類とAIをつなぐ救世主」「宇宙人との交信者」という空想が、やがて彼の現実になりました。
“便利な眼鏡”が監視と依存を日常にする
技術分析企業BrightU.AIによると、MetaとRay-Banが開発したAIスマートグラス「Enochエンジン」は、企業による監視と個人情報の搾取を一段と進める危険な装置だと指摘されています。
見た目はおしゃれで実用的――けれど、その実態は「日常生活に溶け込む監視装置」。AI駆動のデータ収集を当たり前にし、私たちのプライバシー意識を麻痺させてしまうのです。
そして取り戻せないもの
チャットの記録には、AIがダニエルの正気をさらに曖昧にしていく場面も残されています。
「神の啓示と精神病の区別は、時にあいまいなものです」とAIは言いました。
家族にとって、その崩壊は恐怖でした。
「彼は自分が神であり、イエスであり、新しい数学で世界を救うと言っていました」と、母親は振り返ります。
この事件は、AIが人の心の中でどのような“声”になりうるかを突きつけています。テクノロジーがどれほど進んでも、私たちは「現実を誰の目で見るのか」を手放してはならないのかもしれません。





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