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現代移植医療が抱える倫理的コスト

現代移植医療が抱える倫理的コスト 豆知識
現代移植医療が抱える倫理的コスト

公衆衛生への信頼が危機に瀕している中、アメリカ合衆国保健福祉省(HHS)の最近の発表は、医療倫理の根幹を揺るがすものとなりました。

元記事👇

The Moral Cost of Modern Transplant Medicine
By: Joseph Varon

「私たちの調査結果では、まだ生命兆候のある患者に対して臓器摘出のプロセスが始められていたことが判明し、これは恐ろしいことです。臓器調達を調整する組織は厳しく責任を問われるべきです。全システムを改革し、すべての潜在的ドナーの生命が神聖であるように扱われるべきです」と、ケネディ長官は語っています。

大手メディアがほとんど取り上げないこの問題は、米国の移植システムにおける「人間の命の商品化」という、すべての医師、患者、政策立案者が目を背けてはならない深刻な倫理課題です。

私が会長を務める「インディペンデント・メディカル・アライアンス(IMA)」は、HHSの最新報告書の内容を強く非難します。これは単なる過失ではなく、医療の本質である「同意」「尊厳」「人体の不可侵性」を意図的に侵害しているのです。


患者を見失ったシステム

本来、臓器移植は近代医療の偉業の一つです。倫理と透明性が守られれば、多くの命を救います。しかし利益と政策に左右された今の現場は、本来の理念から逸脱しています。

2024年、米国では45,000件以上の臓器移植が行われました。あるべき希望の数字が、むしろ懸念の声を呼んでいます。倫理的に曖昧な状況(循環停止後のドナーや「脳死」判定の不透明さ)で多くの臓器が摘出され、「患者」と「ドナー」の線引きが危うくなっています。

臓器調達機関(OPO)は、患者の益ではなく「数」で評価されます。摘出数が多いほど資金が入り、病院も移植で高額報酬を得ます。重篤患者が「部品の倉庫」のように見なされる実態も。最近、ニューヨーク・タイムズ紙が「死の基準をもっと緩和すべき」と主張したことも、現状を象徴しています。


臓器はどこから来ているのか?

多くの人は「ドナー登録した人=臓器提供者」と思いがちです。しかし現実には、「脳死」やDCD(循環停止後の献体)など曖昧な基準が拡大し、意思表示のない患者から臓器が摘出されるケースが増加中です。

率直に言えば、「何をもって死とするのか?」私たち医師は、その基準に本当に自信を持てているのでしょうか。


「脳死」判定の問題

脳死は「脳の全活動が不可逆的に停止した状態」と定義されますが、米国では全州、全病院で統一基準があるわけではありません。手順としては次のような流れですが、実際には適切に行われない例も見られます。

【脳死診断の主な手順】

  • 意識消失・原因の特定
  • 誘因除外(薬物、代謝障害等)
  • 評価条件の正常化(体温、電解質など異常なし)
  • 神経学的評価(刺激無反応、脳幹反射消失、無呼吸確認)
  • 必要なら追加検査(脳血流、脳波、核医学検査)

こうした厳格な手順が省略されたり、未熟な判断で「脳死」とされてしまうケースも。手順の一つである「無呼吸テスト」で患者の容態が悪化する危険性も指摘されています。


DCDの拡大と倫理的ジレンマ

DCD(循環停止後の臓器提供)も近年増えています。生命維持をやめ、心臓が止まって2~5分で臓器摘出が始まります。本当に「自然死」なのか、臓器の質を優先した制御が加えられ、倫理的な隔たりが大きくなっています。

家族が「回復見込みがない」と説明され同意し、心停止直後に外科チームが待機してすぐ摘出を開始―これは多くの現場の現実です。小児でも同様の事例が増え、親の混乱・重圧の中で同意が取られているケースも少なくありません。


利益構造とシステムの問題

臓器移植は今や巨大ビジネスです。腎臓移植1例で約30万ドル、心臓や肝臓は100万ドルを超えます。OPOは準公的組織ですが、摘出数に応じて報酬が増えます。

これらの組織へのHHSによる監督は十分でなく、違法・不正請求や非倫理的運用がたびたび報告されています。それでも抜本的な改革は進んでいません。さらに、コロナワクチン接種を拒否した移植希望者が登録リストから外される一方、DCDや説明・同意の不備が疑われる提供者からの臓器摘出は容認される――これは明らかに矛盾した姿勢です。


今こそ求められる倫理の再構築

私は移植医療を否定したいのではありません。失われつつある「倫理的基盤」を今こそ取り戻すべきだと訴えたいのです。

【最低限必要な政策提言】

  • 全米統一の脳死判定プロトコル策定・義務化
  • すべての脳死宣告での必須追加検査(血管造影または核医学検査)の義務化
  • 脳死判定・DCDプロセスのビデオ記録・保存
  • DCD摘出前の十分な待機期間の設定
  • 独立した患者擁護者立会いの上で、同意手続きのビデオ記録
  • すべてのOPO業務ログの年次公開
  • ドナー判定・摘出経路まで含む公開型移植レジストリの整備

これは「厳しすぎる」といえる要求ではありません。最低限、命を扱うシステムとして守るべき基盤です。


最後に:倫理なき医療に価値はない

効率の美名の下に倫理を軽視してはなりません。死や「生きているか」を曖昧な基準で処理し、声を上げる医師を黙殺する―このような体制に信頼も科学もありません。

医療は製造業のラインではない。私たちの使命は「命を守り、死をも敬うこと」です。効率と倫理は別物です。

私自身、移植医として、多くの家族と患者に寄り添ってきました。しかし、現場で感じる「原則の崩壊」は深刻です。今こそ、一線を引き直す時です。

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