元記事
https://newstarget.com/2026-07-10-study-pesticide-residues-infant-formula-health-risks.html
乳児用ミルクに複数の農薬残留物
ローマ・ラ・サピエンツァ大学の研究者らが発表した科学文献の系統的レビューで、乳児用ミルクから複数種類の農薬残留物が検出されていたことが明らかになりました。
この研究では、乳児用ミルクが乳幼児の短期的・長期的な健康に与える影響について、懸念が示されています。2026年7月に学術誌『Environmental Toxicology and Pharmacology』で発表された分析では、1975年から2025年までに実施された26件の研究を調査。そのうち22件で、何らかの汚染が報告されていました。
研究者らによると、問題となっているのは、特定の1種類の農薬だけではありません。
「乳児用ミルクの汚染は、単一の物質群だけに関係するものではない。農薬残留物、重金属、残留性環境汚染物質、マイコトキシン、包装材料から放出される化合物など、さまざまなリスクが同時に存在し、同じ製品の中で共存する可能性がある」
レビューでは、検出頻度が高かった農薬として、有機塩素系、有機リン系、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系などが挙げられています。
検出された汚染物質と調査方法
今回の系統的レビューでは、ヨーロッパ、アメリカ、インド、ブラジル、中国、ニュージーランド、ベネズエラ、ケニア、イランなど、さまざまな地域のサンプルが調査対象となりました。
なかでも目立ったのが、有機塩素系化合物です。調査された26件の研究のうち、16件で検出されていました。
そのほか、以下のような農薬や化合物も確認されています。
- 有機リン系農薬:7件の研究で検出
- ピレスロイド系農薬:4件の研究で検出
- トリアジン系除草剤:3件の研究で検出
- ネオニコチノイド系農薬
- トリアゾール系化合物
- その他の殺菌剤
複数の研究では、1種類の農薬だけでなく、複数の農薬グループを同時に調べる分析方法が採用されていました。
原材料や製造工程にも注意が必要
研究者らは、汚染は食品が完成するまでのさまざまな段階で起こる可能性があると指摘しています。
「化学物質、とくに農薬による食品汚染は、非常に重要な公衆衛生上の問題である。生後数か月の乳児にとって大切な栄養源である母乳や乳児用ミルクにも影響する可能性があり、乳児は特に影響を受けやすい」
乳児用ミルクの原材料となる牛乳、大豆、穀類などには、農業で使用された農薬が残留している可能性があります。また、製造や加工、包装の過程で、別の汚染物質が加わるケースも考えられます。
さらに、複数の化合物が同時に存在する場合、それぞれの影響が単純に足し合わされる「相加作用」や、組み合わせによって影響が強まる「相乗作用」が起こる可能性もあります。
研究者らは、現在行われている単一物質ごとのリスク評価だけでは、複数の化合物が重なった場合の影響を十分に捉えられない可能性があるとしています。
乳児は農薬の影響を受けやすい
レビューで引用された公衆衛生に関するデータによると、乳児や幼い子どもは、大人よりも農薬の影響を受けやすいとされています。
その理由として、次のような点が挙げられています。
- 体が小さく、体重あたりの影響を受けやすい
- 内臓や神経系などが発達途中にある
- ものを手で触って口に入れる行動が多い
- 体重に対して、食べ物や空気を取り込む量が多い
研究者らは、乳幼児期を将来の健康に大きく関わる「脆弱性の窓」と表現しています。成長の初期段階に受けた化学物質への曝露が、長期的な健康に影響する可能性があるという考え方です。
内分泌かく乱物質への懸念
研究者らが特に懸念を示しているのが、乳児用ミルクに含まれる可能性がある内分泌かく乱化学物質(EDCs)です。
内分泌かく乱化学物質とは、体内のホルモンの働きに影響を及ぼす可能性がある化学物質を指します。発達途中の乳幼児がこうした物質にさらされた場合、生殖機能や発達に関わる問題につながる可能性があると考えられています。
研究者らは、次のように述べています。
「この証拠は、新生児が異なる種類の複数の汚染物質に同時にさらされる可能性があるという考えを裏付けるものである。また、内分泌系に対して相乗的な影響が生じる可能性もある」
原文では、グリホサートなどの農薬について、小児科医からも発達への悪影響や内分泌かく乱との関連を指摘する声があると紹介されています。
ただし、農薬や食品の安全性については、研究の対象、濃度、摂取量などによって評価が異なります。乳児用ミルクを使用している家庭は、必要以上に不安を抱え込まず、気になる場合は小児科医や自治体の相談窓口に確認するとよいでしょう。
乳児食品の汚染をめぐる過去の問題
乳児向け食品に含まれる汚染物質の問題は、今回初めて指摘されたものではありません。
レビューを分析した『Beyond Pesticides』の記事によると、2016年には、オーガニック表示の信頼性を損なっているとして、オーガニック・コンシューマーズ・アソシエーションが複数の企業を相手に訴訟を起こしました。
この訴訟では、オーガニック製品として販売されていた商品に、アメリカの国家オーガニック・プログラムの基準を満たしていないとされる原材料が含まれていたことが問題とされました。
また、レビューで取り上げられた研究では、遺伝子組み換え作物と食品中の農薬残留物との関係についても触れられています。
除草剤への耐性を持つ作物から作られた家畜用飼料では、グリホサートなどの除草剤が検出された例があります。そのため、その飼料を食べた家畜から得られる乳製品が、乳児用ミルクの原材料として使われる場合、汚染の可能性が高まるのではないかという指摘です。
さらに原文では、遺伝子組み換え作物について、腸の不調、不妊、子どものがん、ホルモンの乱れなどとの関連を指摘する研究があると紹介されています。
レビューの著者らは、現在設定されている農薬の最大残留基準値(MRL)について、乳児に対して十分な安全余裕を保証するには不十分だと主張しています。
オーガニック農業への転換を求める声
農薬残留物を減らすため、オーガニック農業への幅広い転換を求める団体もあります。
『Beyond Pesticides』の記事では、今回の系統的レビューをもとに、次のような主張が紹介されています。
「乳児用ミルクだけでなく、ベビーフードやその他すべての作物由来製品から汚染物質をなくすためには、大規模なオーガニック農業への転換が必要である」
同団体は、乳児の健康を守るために、消費者がオーガニック製品を優先して選ぶことや、より厳格なオーガニック基準を支持することをすすめています。
ジャネット・マーシャル氏は著書『The ABC of healthy eating for babies and toddlers』の中で、オーガニック食品は子どもの健康を守るだけでなく、環境にも役立つ持続可能な農業を支えると述べています。
また、『Diet for a poisoned planet』の著者デビッド・スタインマン氏も、ベビーフードに設定されている現在の農薬基準は不十分であり、保護者は農業用化学物質を含まない製品を求めるべきだと主張しています。
研究者らは、食品の安全性を確保するためには、現在の規制値だけに頼るのではなく、生涯にわたる健康への影響を防ぐための対策が必要だと結論づけています。
まとめ
今回のレビューでは、過去に行われた研究の一部で、乳児用ミルクから複数種類の農薬残留物が検出されていたことが報告されました。乳児は体の機能が発達途中で、大人よりも化学物質の影響を受けやすいと考えられています。
一方で、この記事の内容は、複数の研究をまとめたレビューに基づく報告です。すべての乳児用ミルクが危険だと示しているわけではなく、検出された濃度や実際の健康影響については、個別に確認する必要があります。
ミルク選びで不安を感じたときは、商品の表示やメーカーの安全管理情報を確認し、必要に応じて医師や薬剤師、自治体の相談窓口に相談しましょう。




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